アイドルと音楽の備忘録

アイドル/アニメ/声優ソングを楽理の視点で分析しています。

青空Jumping Heartがコード進行を学ぶ教材にピッタリだという話

ポップスでよく使われる和音やコード進行が一通り出てくるのでオススメ。この曲の構造が分かるようにになれば大体のポップスは理解できると思う。

 

青空Jumping Heart / Aqours

 

コード譜

 

各セクションの解説

OP~イントロ

OPの4小節で使われているのはⅠ,Ⅳ,Ⅴのスリーコードだけ。

イントロの5,6小節のAm→DmはルートがⅥ→Ⅱと4度上昇する強進行。

最後はDm→Gsus4のツーファイブでAメロで繋げている。

 

Aメロ

前半の8小節はカノン進行の変形。4~7小節がルートをⅣ→#Ⅳ→Ⅴと半音上昇させる進行、8小節目が同主調(Cminor)からの借用和音を使ったbⅥ→bⅦの進行。どちらも定番の進行。

後半8小節は半音下降の進行とツーファイブワンの組み合わせ。9~12小節はベースをⅠ→Ⅶ→bⅦ→Ⅵと半音ずつ下げる進行、13~16小節がツーファイブワン。この時、12,13小節がⅥ→Ⅱmのセカンダリードミナントになっている。

 

Bメロ

前半4小節が王道進行の変形で後半4小節はルートをⅡ→Ⅲ→Ⅳ→Ⅴと上げていく上昇進行。

4小節目のF#φ(#Ⅳφ)はAm(Ⅵm)の代用。構成音が似ているので代用として成り立っているのだと思われる。

F#φ = F#,A,C,E

Am = A,C,E

8小節目のD/F#はベースをF→F#→Gと半音で繋げるためのパッシングコード。ルートをⅡ→Ⅲ→Ⅳ→Ⅴと上昇させる際に#Ⅳを入れるのはよくある手法。

2番では4小節目がEbaugに変わっており3~5小節でルートをⅢ→bⅢ→Ⅱと半音下降させている。ここではbⅢaug(Ebaug)が使われているが、他にbⅢdimやⅠm/bⅢ等が使われることもある。

 

サビ

サビはカノン進行。カノン進行は本来C→G→Am→Em...と1小節ずつコードが変わっていくが、この曲はテンポが早いのでC→C→G→G→Am→Am→Gm→C...と2小節単位でコードが変わっている。

7,8小節目はFmajへ部分転調している。7~9小節のGm7→C7→FがFmajではⅡm7→Ⅴ7→Ⅰになる。

カノン進行の5~6小節(この曲では9~12小節)を王道進行(4536)にするのも定番。

15小節目のAbは同主調(Cminor)からの借用和音で機能はサブドミナントマイナー。ここではAb(bⅥ)が使われているが、この位置にBb(bⅦ)が来ることもある。

 

間奏1

イントロでは最後がDm→Gsus4(Ⅱm→Ⅴsus4)だったが、ここではDm→Ab・Bb(Ⅱm→bⅥ・bⅦ)に変わっている。

 

<中略>

Aメロ,Bメロ,サビの繰り返し。

 

間奏2

ここから難しくなる。

5~7小節のBφ→E7→Amは平行調(Aminor)のツーファイブワン。

7,8小節はおそらくAm→A(Ⅵm→Ⅵ)の進行をアレンジしているものだと思われる。

8,9小節はⅥ→Ⅱmのセカンダリードミナント

11,12小節のEm→Asus4はルートがⅢ→Ⅵと4度上昇する強進行。

12,13小節で再びⅥ→Ⅱmのセカンダリードミナント

13,14小節のFm→Bbは同主調平行調(=Ebmaj)からの借用和音。EbmajではⅡm→Ⅴになる。

 

Cメロ

5,6小節のBφ→E7→Amは先程も出てきた平行調(Aminor)のツーファイブワン。

8小節目のGm→Cもサビで出てきた下属調(Fmaj)のツーファイブ。ただ今回はその次のコードがFではなくF#φになっている。これはFM7のルートを半音上げた和音。

9~12小節は2番のBメロでも使われていた王道進行を半音下降させるようにアレンジした形。

10小節目のFmは同主調(Cminor)からの借用和音。

14小節目のD/F#はBメロでも使われていたパッシングコード。

 

ラスサビ

13~15小節のDm→E7→Amは平行調(Aminor)のⅣm→Ⅴ7→Ⅰ。

16小節目のD(Ⅱ)は次のF(Ⅳ)に対するセカンダリードミナントのようなコード。厳密にはセカンダリードミナントではないがⅡ→Ⅳの進行はよく使われる。

20小節目のEb(bⅢ)は曲中でも何度か使われているルートをⅢ→bⅢ→Ⅱと半音で繋げるためのコードであり、Am(Ⅵm)の裏コードでもある。

 

ED

最後はドミナント→トニックではなくサブドミナント→トニックの偽終止で終わっている。

 

まとめ

2番から難しくなるのでまずは1コーラス理解できるようになると良い。それだけでも十分他の曲で応用できる。

あぁ~!佐伯高志の転調ォ~!!

何度聞いてもこの曲の転調は素晴らしい。

 

冬がくれた予感 / BiBi

 

コード譜

 

曲の構成

OPBridgeAメロBメロサビBridge間奏1 → <中略>

Fmaj Gmaj    Ebmaj       Gmaj        Emaj

間奏2ギターソロサビBridgeED

  Bbmaj    Gmaj            Fmaj

 

長2度、長3度、短3度、半音の計4種類の転調が使われている。

 

各転調の解説

Fmaj → Gmaj (長2度)

予告コードが無い代わりに5小節目のブレイクがクッションのような役割を担っている。

 

Gmaj → Ebmaj (長3度)

Bridgeの最後のコードがG。これはGmajだとⅠ、EbmajだとⅢになる。Aメロの最初のコードがCm(Ⅵm)なのでⅢ→Ⅵmのセカンダリードミナントで転調している。

 

Ebmaj → Gmaj (長3度)

Bメロの最後でGsus4を解決している。これはEbmajではⅢsus4→Ⅲ、GmajではⅠsus4→Ⅰになる。サビの最初のコードがC(Ⅳ)なのでⅠ→Ⅴのセカンダリードミナントで転調している。

 

Gmaj → Emaj (短3度)

Bridgeの最後がG(Ⅰ)で終わっている。なのでこれはドミナントやセカンダリードミナントで次の調へ繋げるパターンではなく、セクションの最後をトニックで終えて次のセクション(間奏1)へ移行する形。

 

Emaj → Ebmaj (半音)

ここは予告コード無しの転調。

 

Gmaj → Bbmaj (短3度)

サビ2の最後のコードがD。これはGmajだとⅤ、BbmajだとⅢになる。間奏2の最初のコードがEb(Ⅳ)なのでⅢ→Ⅳの進行で転調している。

 

Bbmaj → Gmaj (短3度)

間奏2の最後のコードがF6。これはBbmajだとⅤ6、GmajだとbⅦ6になる。ギターソロの最初のコードがEm(Ⅵm)なのでbⅦ→Ⅵmの進行で転調している。

間奏2で短3度上昇したので元の調へ戻るための転調。

 

Gmaj → Fmaj (長2度)

Bridgeの最後がG(Ⅰ)で終わっている。ここもセクションの最後をトニックで終えて次のセクション(ED)へ移行する形。

曲冒頭の調(Fmaj)へ戻るための転調。

 

まとめ

Bメロの5~6小節で使われている#Ⅳφ→Ⅳ→Ⅲm→Ⅰm/bⅢの進行は佐伯高志の曲で頻繁に出てくるので覚えておくと良い。

イマを重ねそしてミライへ向かおう

WATER BLUE NEW WORLDについて言及するのはいったい何度目だろうか。

 

WATER BLUE NEW WORLD / Aqours

 

コード譜

 

 

曲の構成

OPOP'イントロABB'サビサビ'間奏1 → <中略>

Bb  G      D         Eb    Ab    A    D

間奏2間奏2'CC'サビサビ'ED

   D    A     G   Ab    A    D

 

短3度、属調、半音、下属調、長2度の計5種類の転調が使われている。曲中の転調回数はなんと15回。

 

各セクションごとの解説

OP (Bbmaj→Gmaj)

1~4小節がⅥm→Ⅳ→Ⅰ→Ⅴで5~8小節がⅥm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ。佐伯高志はこういう1箇所だけ変える手法をよく使う(4563と4536みたいな)。

9小節目からGmajへ転調。8小節目の最後のDが転調の予告コードで、これはBbmajだとⅢ、GmajだとⅤになる。

ここは言わば序奏のようなセクションで、次のイントロからが本題。

 

イントロ (Dmaj)

イントロでDmajへ転調。GmajとDmajのピボットコードであるDを使って転調している。

前半はカノンで後半は下降クリシェのよくある進行。

 

Aメロ (Dmaj)

ここは7小節目のGm(Ⅳm)が意外。急にサブドミナントマイナーが出てくるのでドキッとする。

9~12小節目のⅥm→Ⅴ→Ⅳ→Ⅰは佐伯高志が時々使う進行。他ではあまり見ない(と思う)。

 

Bメロ (Dmaj→Ebmaj)

前半はⅠ/Ⅲ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰの繰り返し。個人的にこの進行大好き。

9小節目から半音上がってEbmajになる。ここは特に予告コード無し。

13~16小節目はノンダイアトニックコード(bⅥ,bⅦ)を使った半音下降の進行。15~16小節はメロディーもコードに合わせてBメジャースケールを適用している。

 

サビ (Abmaj→Amaj)

サビは小室進行。

9小節目から半音上がってAmajになる。ベースをAb→G→F#と半音で繋げながら転調している。

2番はサビが15小節。これは本来の16小節から最後の1小節を省略した形。

これについてはこちらの記事を合わせてどうぞ。

音楽における偶数と奇数 - アイドルと音楽の備忘録

 

間奏1 (Dmaj)

間奏1でDmajへ転調。サビのメロディーの最後の音がAで、これはAmajとDmajで共通のダイアトニックトーンであり間奏1の最初のコード"D"の構成音でもある。これによって違和感なくDmajへ転調している。

 

間奏2 (Dmaj→Amaj)

17小節目からAmajへ転調。

17~21小節のⅥm→Ⅲm→Ⅳ・Ⅴ→Ⅰの進行大好き。ラブライブだと「微熱からMystery」や「NO EXIT ORION」等でも使われている。

 

微熱からMystery / lily white

 

NO EXIT ORION / Printemps

 

Cメロ (Amaj→Gmaj)

9小節目からGmajへ転調。8小節目のAがGmajではⅡになるのでⅡ→Ⅵmのセカンダリードミナントで転調している。

ここはOPと同じメロディーだが前半の調がBbmajからAmajへ変わっているためあたかも新しいメロディーが始まったかのように感じる。

 

ラスサビ (Abmaj→Amaj)

最後のサビは32小節。何度も繰り返しクライマックスを盛り上げている。

 

ED (Dmaj)

曲中で何度か転調してきたが、ラストでしっかりとDmajへ戻る。

 

感想

Cメロ~ラスサビの流れが特に美しい。最後に半音上昇するのは常套手段だが、この曲では既存のセクション(OP,サビ)を組み合わせて半音上昇を生み出している。僕たちはひとつの光について書いた記事 でも言ったが、こういう最初から最後まで計算して作られているような曲は本当に魅力的。

セカイはきっと知らないパワーで輝いてる

河田貴央は遊びじゃない。

 

Awaken the power / Saint Aqours Snow

 

コード譜

 

OPイントロABB'サビ間奏間奏'ABB'サビED

Dmaj          Fmaj  F#maj     Dmaj      Fmaj   F#maj

 

いかにも"ギター"って感じのコード進行。

Bメロの途中でDmajからFmajへ転調するが、どちらもBb→Cから始まるので転調の際に生じる違和感が無い。Bb→CはDmajだとbⅥ→bⅦ、FmajだとⅣ→Ⅴ。

FmajからF#majへの転調ではBメロの最後にC#(FmajだとbⅥ、F#majだとⅤ)を入れⅤ→Ⅰのドミナントモーションで転調している。

間奏'のG→A→Bb→CはⅣ→Ⅴ→bⅥ→bⅦの平行移動。

夢みてひらひら

Ⅳ→Ⅲ→Ⅵmの進行は個人的に当たり外れが激しいがこの曲は大当たりのタイプ。

 

春情ロマンティック / lily white

 

コード譜

 

曲の構成

イントロABサビCC'間奏間奏'落ちサビサビED

Gmaj      Ebmaj Gmaj    Fmaj  Ebmaj Fmaj       Gmaj

 

各転調の解説

変わった転調が多いので詳しく見ていく。

 

Gmaj → Ebmaj (長3度)

Aの最後のコードがG。これはGmajだとⅠ、EbmajだとⅢになる。Bの最初のコードがCm(Ⅵm)なのでⅢ→Ⅵmのセカンダリードミナントで転調している。

長3度上がる転調は時々あるが下がるのは珍しい。

 

Ebmaj → Gmaj (長3度)

Bの最後のコードがB。これはEbmajだとbⅥ、GmajだとⅢになる。サビの最初のコードがC(Ⅳ)なのでⅢ→Ⅳの進行で転調している。

Bで長3度下がったので元へ戻るための転調。

 

Gmaj → Fmaj (長2度)

Cの最後のコードがG7。これはGmajだとⅠ7、FmajだとⅡ7になる。C'の最初のコードがBb(Ⅳ)なのでⅡ→Ⅳの進行で転調している。

セクションの途中で長2度下がるのは珍しい(と思う)。

 

Fmaj → Ebmaj (長2度)

C'の最後のコードがCm。これはFmajだとⅤm、EbmajだとⅥmになる。間奏の最初のコードがAbadd9(Ⅳadd9)なのでⅥm→Ⅳadd9の進行で転調している。

予告コードにⅥmを使っている不思議な転調。

 

Ebmaj → Fmaj (長2度)

間奏の最後のコードがDm。これはEbmajだとⅦm、FmajだとⅥmになる。間奏'の最初のコードがBbadd9(Ⅳadd9)なのでここもⅥm→Ⅳadd9の進行で転調している。

再びFmajへ戻るための転調。

 

Fmaj → Gmaj (長2度)

落ちサビの最後のコードがB。これはFmajだと#Ⅳ、GmajだとⅢになる。サビの最初のコードがC(Ⅳ)なのでⅢ→Ⅳの進行で転調している。

転調を繰り返してきても最後にはしっかりとGmajに戻る。

 

感想

Bメロで長3度下がるだけでも変わってるし、C'間奏間奏'のⅥmを使った転調も謎すぎる。