アイドルと音楽の備忘録

アイドル/アニメ/声優ソングを楽理の視点で分析しています。

キミは目撃者だよ

日刊佐伯高志

 

UNLIMITED IMPACT / マルゼンスキーフジキセキオグリキャップ

※5:01~

 

コード譜

 

曲の構成

OPイントロABB'サビ → <中略>

Emaj          Fmaj Gmaj

間奏ギターソロ → ギターソロ' → ラスサビED

             Cmaj    Gmaj   Emaj

 

半音、全音、短3度、下属調属調の計5種類の転調が使われている。

 

各転調の解説

Emaj → Fmaj (半音)

予告コード無しのダイレクトモジュレーション。

 

Fmaj → Gmaj (全音)

Bメロ(Bb~A)の最後でAsus4を解決している。これはFmajだとⅢsus4→Ⅲ、GmajだとⅡsus4→Ⅱになる。サビの最初のコードがEm(Ⅵm)なのでⅡ→Ⅵmの進行で転調している。

 

Gmaj → Emaj (短3度)

サビの最後のコードがD。これはGmajだとⅤ、EmajだとbⅦになる。イントロ繰り返し部の最初のコードがC#m(Ⅵm)なのでbⅦ→Ⅵmの進行で転調している。

 

Gmaj → Cmaj (下属調)

ギターソロ(Em~B)の最後のコードがB。これはGmajだとⅢ、CmajだとⅦになる。ギターソロ'(Am~A)の最初のコードがAm(Ⅵm)なのでⅦ→Ⅵmの進行で転調している。

F#m→BはGmajの平行調(=Eminor)からのツーファイブの借用。本来はEm(Ⅵm)へ解決すべきところだがこの曲ではAm(Ⅱm)へ進んでいる。その結果、転調先のCmajから見るとB→AmがⅦ→Ⅵmという珍しい進行になっている。

 

Cmaj → Gmaj (属調)

ギターソロ'の最後でAsus4を解決している。これはCmajだとⅥsus4→Ⅵ、GmajだとⅡsus4→Ⅱになる。ラスサビの最初のコードがEm(Ⅵm)なのでⅡ→Ⅵmの進行で転調している。

同じAsus4でもBメロサビの時とはコードが機能が違う。

 

まとめ

EmajからGmajへ直接短3度で転調するのではなく、Fmajを経由することで半音と全音の2回に分けているのが特徴。

笑わないよ!カタチから入っていいんじゃない?

やっぱり酒井拓也は変態だ(褒め言葉)。

 

Beginner's Sailing / 渡辺曜

 

コード譜

 

各セクションの解説

OP

動画の試聴版だと省略されている。

メロディーは大サビ(サビの17小節~)と同じ。

3,4小節はⅣ→Ⅲ→Ⅵm→Ⅱの進行。最後のⅡが第一転回形のⅡ/#Ⅳになっている。

11小節目のFM7(#ⅠM7)はB(Ⅴ)の裏コード。Ⅴ→Ⅰのドミナントモーションの間にワンクッション挟むような形。

 

Bridge

曲の主題のようなセクション。

基本的にルートをE(Ⅰ)で固定しているが、2,4小節は強拍(3,5小節)へのフックとしてD(bⅦ)へ動いている。

C→D(bⅥ→bⅦ)は同主調平行調(=Gmaj)からの借用和音。

 

Aメロ

5,6小節はサブドミナントマイナーを用いたⅣ→Ⅳmの進行。

16小節目のDはその次のCにベースを階段状で繋げるためのパッシングコード。

2番では前半の8小節が省略されている。

 

Bメロ

最初のコードがノンダイアトニックコードのC(bⅥ)。それに伴いメロディーの最初の音もCの構成音のG(bⅢ)から始まっている。

5~8小節は王道進行(4536)の2つ目のコードがⅣmになった形。

15小節目のC/D(bⅥ/bⅦ)はGmajのⅣ/Ⅴを借用した和音。

 

サビ

前半(1~8小節)は比較的シンプルなカノン進行。

後半(9~16小節)は少し変わっている。12,13小節のC#/F→F#mはⅥ→ⅡmのセカンダリードミナントだがⅥを第一転回形のⅥ/#Ⅰにすることでベースを#Ⅰ→Ⅱと半音で繋げている。

大サビ(17小節~)はOPと同じメロディーだがコード進行が変わっている。OPではⅠ→ⅢmだったところがⅣ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵmになったり、Ⅳ→Ⅲ→Ⅵm→ⅡがⅡm→Ⅲ→Ⅵm→Ⅱになったりと変化している箇所がいくつかある。

24,25小節のB→D→G→C→Bは、最初にB(Ⅴ)→D(bⅦ)と短三度上昇し、その後D(bⅦ)→G(bⅢ)→C(bⅥ)と4度ずつ進み、最後にC(bⅥ)→B(Ⅴ)で半音下がるという流れ。

26小節目のFM7はOPでも使われていたⅤ(B)の裏コードの#Ⅰ。

2番では大サビが省略されている。

 

Bメロ2

1番のBメロ繰り返しではなく完全に新しいセクションとなっている。

12小節目のC#aug(Ⅵaug)はC#7b13(Ⅵ7b13)から5th(G#)と7th(B)を省略した形で、次のF#m(Ⅱm)へのセカンダリードミナント

C#aug = C#,F,A C#7b13 = C#,F,G#,B,A

13~16小節は王道進行(4536)の変形。

16,17小節もⅥ→Ⅱmのセカンダリードミナント

20小節目のAm7(Ⅳm7)ではメロディーにノンダイアトニックトーンのG(bⅢ)の音が使われている。

 

ギターソロ

7,8小節目はベースが半音で下がる下降クリシェ

 

Cメロ

2~4小節の「まだわからないね」の"わ"が曲中最高音のE5。

 

ED

基本的にはBridgeと同じだが9~12小節はずっとルートがE(Ⅰ)で固定されている。

 

感想

転回形や借用和音が多用されていて、やっぱり酒井拓也は鍵盤奏者なんだなと感じる。

青空Jumping Heartがコード進行を学ぶ教材にピッタリだという話

ポップスでよく使われる和音やコード進行が一通り出てくるのでオススメ。この曲の構造が分かるようにになれば大体のポップスは理解できると思う。

 

青空Jumping Heart / Aqours

 

コード譜

 

各セクションの解説

OP~イントロ

OPの4小節で使われているのはⅠ,Ⅳ,Ⅴのスリーコードだけ。

イントロの5,6小節のAm→DmはルートがⅥ→Ⅱと4度上昇する強進行。

最後はDm→Gsus4のツーファイブでAメロで繋げている。

 

Aメロ

前半の8小節はカノン進行の変形。4~7小節がルートをⅣ→#Ⅳ→Ⅴと半音上昇させる進行、8小節目が同主調(Cminor)からの借用和音を使ったbⅥ→bⅦの進行。どちらも定番の進行。

後半8小節は半音下降の進行とツーファイブワンの組み合わせ。9~12小節はベースをⅠ→Ⅶ→bⅦ→Ⅵと半音ずつ下げる進行、13~16小節がツーファイブワン。この時、12,13小節がⅥ→Ⅱmのセカンダリードミナントになっている。

 

Bメロ

前半4小節が王道進行の変形で後半4小節はルートをⅡ→Ⅲ→Ⅳ→Ⅴと上げていく上昇進行。

4小節目のF#φ(#Ⅳφ)はAm(Ⅵm)の代用。構成音が似ているので代用として成り立っているのだと思われる。

F#φ = F#,A,C,E

Am = A,C,E

8小節目のD/F#はベースをF→F#→Gと半音で繋げるためのパッシングコード。ルートをⅡ→Ⅲ→Ⅳ→Ⅴと上昇させる際に#Ⅳを入れるのはよくある手法。

2番では4小節目がEbaugに変わっており3~5小節でルートをⅢ→bⅢ→Ⅱと半音下降させている。ここではbⅢaug(Ebaug)が使われているが、他にbⅢdimやⅠm/bⅢ等が使われることもある。

 

サビ

サビはカノン進行。カノン進行は本来C→G→Am→Em...と1小節ずつコードが変わっていくが、この曲はテンポが早いのでC→C→G→G→Am→Am→Gm→C...と2小節単位でコードが変わっている。

7,8小節目はFmajへ部分転調している。7~9小節のGm7→C7→FがFmajではⅡm7→Ⅴ7→Ⅰになる。

カノン進行の5~6小節(この曲では9~12小節)を王道進行(4536)にするのも定番。

15小節目のAbは同主調(Cminor)からの借用和音で機能はサブドミナントマイナー。ここではAb(bⅥ)が使われているが、この位置にBb(bⅦ)が来ることもある。

 

間奏1

イントロでは最後がDm→Gsus4(Ⅱm→Ⅴsus4)だったが、ここではDm→Ab・Bb(Ⅱm→bⅥ・bⅦ)に変わっている。

 

<中略>

Aメロ,Bメロ,サビの繰り返し。

 

間奏2

ここから難しくなる。

5~7小節のBφ→E7→Amは平行調(Aminor)のツーファイブワン。

7,8小節はおそらくAm→A(Ⅵm→Ⅵ)の進行をアレンジしているものだと思われる。

8,9小節はⅥ→Ⅱmのセカンダリードミナント

11,12小節のEm→Asus4はルートがⅢ→Ⅵと4度上昇する強進行。

12,13小節で再びⅥ→Ⅱmのセカンダリードミナント

13,14小節のFm→Bbは同主調平行調(=Ebmaj)からの借用和音。EbmajではⅡm→Ⅴになる。

 

Cメロ

5,6小節のBφ→E7→Amは先程も出てきた平行調(Aminor)のツーファイブワン。

8小節目のGm→Cもサビで出てきた下属調(Fmaj)のツーファイブ。ただ今回はその次のコードがFではなくF#φになっている。これはFM7のルートを半音上げた和音。

9~12小節は2番のBメロでも使われていた王道進行を半音下降させるようにアレンジした形。

10小節目のFmは同主調(Cminor)からの借用和音。

14小節目のD/F#はBメロでも使われていたパッシングコード。

 

ラスサビ

13~15小節のDm→E7→Amは平行調(Aminor)のⅣm→Ⅴ7→Ⅰ。

16小節目のD(Ⅱ)は次のF(Ⅳ)に対するセカンダリードミナントのようなコード。厳密にはセカンダリードミナントではないがⅡ→Ⅳの進行はよく使われる。

20小節目のEb(bⅢ)は曲中でも何度か使われているルートをⅢ→bⅢ→Ⅱと半音で繋げるためのコードであり、Am(Ⅵm)の裏コードでもある。

 

ED

最後はドミナント→トニックではなくサブドミナント→トニックの偽終止で終わっている。

 

まとめ

2番から難しくなるのでまずは1コーラス理解できるようになると良い。それだけでも十分他の曲で応用できる。

あぁ~!佐伯高志の転調ォ~!!

何度聞いてもこの曲の転調は素晴らしい。

 

冬がくれた予感 / BiBi

 

コード譜

 

曲の構成

OPBridgeAメロBメロサビBridge間奏1 → <中略>

Fmaj Gmaj    Ebmaj       Gmaj        Emaj

間奏2ギターソロサビBridgeED

  Bbmaj    Gmaj            Fmaj

 

長2度、長3度、短3度、半音の計4種類の転調が使われている。

 

各転調の解説

Fmaj → Gmaj (長2度)

予告コードが無い代わりに5小節目のブレイクがクッションのような役割を担っている。

 

Gmaj → Ebmaj (長3度)

Bridgeの最後のコードがG。これはGmajだとⅠ、EbmajだとⅢになる。Aメロの最初のコードがCm(Ⅵm)なのでⅢ→Ⅵmのセカンダリードミナントで転調している。

 

Ebmaj → Gmaj (長3度)

Bメロの最後でGsus4を解決している。これはEbmajではⅢsus4→Ⅲ、GmajではⅠsus4→Ⅰになる。サビの最初のコードがC(Ⅳ)なのでⅠ→Ⅴのセカンダリードミナントで転調している。

 

Gmaj → Emaj (短3度)

Bridgeの最後がG(Ⅰ)で終わっている。なのでこれはドミナントやセカンダリードミナントで次の調へ繋げるパターンではなく、セクションの最後をトニックで終えて次のセクション(間奏1)へ移行する形。

 

Emaj → Ebmaj (半音)

ここは予告コード無しの転調。

 

Gmaj → Bbmaj (短3度)

サビ2の最後のコードがD。これはGmajだとⅤ、BbmajだとⅢになる。間奏2の最初のコードがEb(Ⅳ)なのでⅢ→Ⅳの進行で転調している。

 

Bbmaj → Gmaj (短3度)

間奏2の最後のコードがF6。これはBbmajだとⅤ6、GmajだとbⅦ6になる。ギターソロの最初のコードがEm(Ⅵm)なのでbⅦ→Ⅵmの進行で転調している。

間奏2で短3度上昇したので元の調へ戻るための転調。

 

Gmaj → Fmaj (長2度)

Bridgeの最後がG(Ⅰ)で終わっている。ここもセクションの最後をトニックで終えて次のセクション(ED)へ移行する形。

曲冒頭の調(Fmaj)へ戻るための転調。

 

まとめ

Bメロの5~6小節で使われている#Ⅳφ→Ⅳ→Ⅲm→Ⅰm/bⅢの進行は佐伯高志の曲で頻繁に出てくるので覚えておくと良い。

イマを重ねそしてミライへ向かおう

WATER BLUE NEW WORLDについて言及するのはいったい何度目だろうか。

 

WATER BLUE NEW WORLD / Aqours

 

コード譜

 

 

曲の構成

OPOP'イントロABB'サビサビ'間奏1 → <中略>

Bb  G      D         Eb    Ab    A    D

間奏2間奏2'CC'サビサビ'ED

   D    A     G   Ab    A    D

 

短3度、属調、半音、下属調、長2度の計5種類の転調が使われている。曲中の転調回数はなんと15回。

 

各セクションごとの解説

OP (Bbmaj→Gmaj)

1~4小節がⅥm→Ⅳ→Ⅰ→Ⅴで5~8小節がⅥm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ。佐伯高志はこういう1箇所だけ変える手法をよく使う(4563と4536みたいな)。

9小節目からGmajへ転調。8小節目の最後のDが転調の予告コードで、これはBbmajだとⅢ、GmajだとⅤになる。

ここは言わば序奏のようなセクションで、次のイントロからが本題。

 

イントロ (Dmaj)

イントロでDmajへ転調。GmajとDmajのピボットコードであるDを使って転調している。

前半はカノンで後半は下降クリシェのよくある進行。

 

Aメロ (Dmaj)

ここは7小節目のGm(Ⅳm)が意外。急にサブドミナントマイナーが出てくるのでドキッとする。

9~12小節目のⅥm→Ⅴ→Ⅳ→Ⅰは佐伯高志が時々使う進行。他ではあまり見ない(と思う)。

 

Bメロ (Dmaj→Ebmaj)

前半はⅠ/Ⅲ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰの繰り返し。個人的にこの進行大好き。

9小節目から半音上がってEbmajになる。ここは特に予告コード無し。

13~16小節目はノンダイアトニックコード(bⅥ,bⅦ)を使った半音下降の進行。15~16小節はメロディーもコードに合わせてBメジャースケールを適用している。

 

サビ (Abmaj→Amaj)

サビは小室進行。

9小節目から半音上がってAmajになる。ベースをAb→G→F#と半音で繋げながら転調している。

2番はサビが15小節。これは本来の16小節から最後の1小節を省略した形。

これについてはこちらの記事を合わせてどうぞ。

音楽における偶数と奇数 - アイドルと音楽の備忘録

 

間奏1 (Dmaj)

間奏1でDmajへ転調。サビのメロディーの最後の音がAで、これはAmajとDmajで共通のダイアトニックトーンであり間奏1の最初のコード"D"の構成音でもある。これによって違和感なくDmajへ転調している。

 

間奏2 (Dmaj→Amaj)

17小節目からAmajへ転調。

17~21小節のⅥm→Ⅲm→Ⅳ・Ⅴ→Ⅰの進行大好き。ラブライブだと「微熱からMystery」や「NO EXIT ORION」等でも使われている。

 

微熱からMystery / lily white

 

NO EXIT ORION / Printemps

 

Cメロ (Amaj→Gmaj)

9小節目からGmajへ転調。8小節目のAがGmajではⅡになるのでⅡ→Ⅵmのセカンダリードミナントで転調している。

ここはOPと同じメロディーだが前半の調がBbmajからAmajへ変わっているためあたかも新しいメロディーが始まったかのように感じる。

 

ラスサビ (Abmaj→Amaj)

最後のサビは32小節。何度も繰り返しクライマックスを盛り上げている。

 

ED (Dmaj)

曲中で何度か転調してきたが、ラストでしっかりとDmajへ戻る。

 

感想

Cメロ~ラスサビの流れが特に美しい。最後に半音上昇するのは常套手段だが、この曲では既存のセクション(OP,サビ)を組み合わせて半音上昇を生み出している。僕たちはひとつの光について書いた記事 でも言ったが、こういう最初から最後まで計算して作られているような曲は本当に魅力的。