あぁ~!佐伯高志の転調ォ~!!
何度聞いてもこの曲の転調は素晴らしい。
冬がくれた予感 / BiBi
曲の構成
OP → Bridge → Aメロ → Bメロ → サビ → Bridge → 間奏1 → <中略>
Fmaj Gmaj Ebmaj Gmaj Emaj
→ 間奏2 → ギターソロ → サビ → Bridge → ED
Bbmaj Gmaj Fmaj
長2度、長3度、短3度、半音の計4種類の転調が使われている。
各転調の解説
Fmaj → Gmaj (長2度)
予告コードが無い代わりに5小節目のブレイクがクッションのような役割を担っている。
Gmaj → Ebmaj (長3度)
Bridgeの最後のコードがG。これはGmajだとⅠ、EbmajだとⅢになる。Aメロの最初のコードがCm(Ⅵm)なのでⅢ→Ⅵmのセカンダリードミナントで転調している。
Ebmaj → Gmaj (長3度)
Bメロの最後でGsus4を解決している。これはEbmajではⅢsus4→Ⅲ、GmajではⅠsus4→Ⅰになる。サビの最初のコードがC(Ⅳ)なのでⅠ→Ⅴのセカンダリードミナントで転調している。
Gmaj → Emaj (短3度)
Bridgeの最後がG(Ⅰ)で終わっている。なのでこれはドミナントやセカンダリードミナントで次の調へ繋げるパターンではなく、セクションの最後をトニックで終えて次のセクション(間奏1)へ移行する形。
Emaj → Ebmaj (半音)
ここは予告コード無しの転調。
Gmaj → Bbmaj (短3度)
サビ2の最後のコードがD。これはGmajだとⅤ、BbmajだとⅢになる。間奏2の最初のコードがEb(Ⅳ)なのでⅢ→Ⅳの進行で転調している。
Bbmaj → Gmaj (短3度)
間奏2の最後のコードがF6。これはBbmajだとⅤ6、GmajだとbⅦ6になる。ギターソロの最初のコードがEm(Ⅵm)なのでbⅦ→Ⅵmの進行で転調している。
間奏2で短3度上昇したので元の調へ戻るための転調。
Gmaj → Fmaj (長2度)
Bridgeの最後がG(Ⅰ)で終わっている。ここもセクションの最後をトニックで終えて次のセクション(ED)へ移行する形。
曲冒頭の調(Fmaj)へ戻るための転調。
まとめ
Bメロの5~6小節で使われている#Ⅳφ→Ⅳ→Ⅲm→Ⅰm/bⅢの進行は佐伯高志の曲で頻繁に出てくるので覚えておくと良い。
イマを重ねそしてミライへ向かおう
WATER BLUE NEW WORLDについて言及するのはいったい何度目だろうか。
WATER BLUE NEW WORLD / Aqours
曲の構成
OP → OP' → イントロ → A → B → B' → サビ → サビ' → 間奏1 → <中略>
Bb G D Eb Ab A D
→ 間奏2 → 間奏2' → C → C' → サビ → サビ' → ED
D A G Ab A D
短3度、属調、半音、下属調、長2度の計5種類の転調が使われている。曲中の転調回数はなんと15回。
各セクションごとの解説
OP (Bbmaj→Gmaj)
1~4小節がⅥm→Ⅳ→Ⅰ→Ⅴで5~8小節がⅥm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ。佐伯高志はこういう1箇所だけ変える手法をよく使う(4563と4536みたいな)。
9小節目からGmajへ転調。8小節目の最後のDが転調の予告コードで、これはBbmajだとⅢ、GmajだとⅤになる。
ここは言わば序奏のようなセクションで、次のイントロからが本題。
イントロ (Dmaj)
イントロでDmajへ転調。GmajとDmajのピボットコードであるDを使って転調している。
前半はカノンで後半は下降クリシェのよくある進行。
Aメロ (Dmaj)
ここは7小節目のGm(Ⅳm)が意外。急にサブドミナントマイナーが出てくるのでドキッとする。
9~12小節目のⅥm→Ⅴ→Ⅳ→Ⅰは佐伯高志が時々使う進行。他ではあまり見ない(と思う)。
Bメロ (Dmaj→Ebmaj)
前半はⅠ/Ⅲ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰの繰り返し。個人的にこの進行大好き。
9小節目から半音上がってEbmajになる。ここは特に予告コード無し。
13~16小節目はノンダイアトニックコード(bⅥ,bⅦ)を使った半音下降の進行。15~16小節はメロディーもコードに合わせてBメジャースケールを適用している。
サビ (Abmaj→Amaj)
サビは小室進行。
9小節目から半音上がってAmajになる。ベースをAb→G→F#と半音で繋げながら転調している。
2番はサビが15小節。これは本来の16小節から最後の1小節を省略した形。
これについてはこちらの記事を合わせてどうぞ。
間奏1 (Dmaj)
間奏1でDmajへ転調。サビのメロディーの最後の音がAで、これはAmajとDmajで共通のダイアトニックトーンであり間奏1の最初のコード"D"の構成音でもある。これによって違和感なくDmajへ転調している。
間奏2 (Dmaj→Amaj)
17小節目からAmajへ転調。
17~21小節のⅥm→Ⅲm→Ⅳ・Ⅴ→Ⅰの進行大好き。ラブライブだと「微熱からMystery」や「NO EXIT ORION」等でも使われている。
微熱からMystery / lily white
NO EXIT ORION / Printemps
Cメロ (Amaj→Gmaj)
9小節目からGmajへ転調。8小節目のAがGmajではⅡになるのでⅡ→Ⅵmのセカンダリードミナントで転調している。
ここはOPと同じメロディーだが前半の調がBbmajからAmajへ変わっているためあたかも新しいメロディーが始まったかのように感じる。
ラスサビ (Abmaj→Amaj)
最後のサビは32小節。何度も繰り返しクライマックスを盛り上げている。
ED (Dmaj)
曲中で何度か転調してきたが、ラストでしっかりとDmajへ戻る。
感想
Cメロ~ラスサビの流れが特に美しい。最後に半音上昇するのは常套手段だが、この曲では既存のセクション(OP,サビ)を組み合わせて半音上昇を生み出している。僕たちはひとつの光について書いた記事 でも言ったが、こういう最初から最後まで計算して作られているような曲は本当に魅力的。
セカイはきっと知らないパワーで輝いてる
河田貴央は遊びじゃない。
Awaken the power / Saint Aqours Snow
OP → イントロ → A → B → B' → サビ → 間奏 → 間奏' → A → B → B' → サビ → ED
Dmaj Fmaj F#maj Dmaj Fmaj F#maj
いかにも"ギター"って感じのコード進行。
Bメロの途中でDmajからFmajへ転調するが、どちらもBb→Cから始まるので転調の際に生じる違和感が無い。Bb→CはDmajだとbⅥ→bⅦ、FmajだとⅣ→Ⅴ。
FmajからF#majへの転調ではBメロの最後にC#(FmajだとbⅥ、F#majだとⅤ)を入れⅤ→Ⅰのドミナントモーションで転調している。
間奏'のG→A→Bb→CはⅣ→Ⅴ→bⅥ→bⅦの平行移動。
夢みてひらひら
Ⅳ→Ⅲ→Ⅵmの進行は個人的に当たり外れが激しいがこの曲は大当たりのタイプ。
春情ロマンティック / lily white
曲の構成
イントロ → A → B → サビ → C → C' → 間奏 → 間奏' → 落ちサビ → サビ → ED
Gmaj Ebmaj Gmaj Fmaj Ebmaj Fmaj Gmaj
各転調の解説
変わった転調が多いので詳しく見ていく。
Gmaj → Ebmaj (長3度)
Aの最後のコードがG。これはGmajだとⅠ、EbmajだとⅢになる。Bの最初のコードがCm(Ⅵm)なのでⅢ→Ⅵmのセカンダリードミナントで転調している。
長3度上がる転調は時々あるが下がるのは珍しい。
Ebmaj → Gmaj (長3度)
Bの最後のコードがB。これはEbmajだとbⅥ、GmajだとⅢになる。サビの最初のコードがC(Ⅳ)なのでⅢ→Ⅳの進行で転調している。
Bで長3度下がったので元へ戻るための転調。
Gmaj → Fmaj (長2度)
Cの最後のコードがG7。これはGmajだとⅠ7、FmajだとⅡ7になる。C'の最初のコードがBb(Ⅳ)なのでⅡ→Ⅳの進行で転調している。
セクションの途中で長2度下がるのは珍しい(と思う)。
Fmaj → Ebmaj (長2度)
C'の最後のコードがCm。これはFmajだとⅤm、EbmajだとⅥmになる。間奏の最初のコードがAbadd9(Ⅳadd9)なのでⅥm→Ⅳadd9の進行で転調している。
予告コードにⅥmを使っている不思議な転調。
Ebmaj → Fmaj (長2度)
間奏の最後のコードがDm。これはEbmajだとⅦm、FmajだとⅥmになる。間奏'の最初のコードがBbadd9(Ⅳadd9)なのでここもⅥm→Ⅳadd9の進行で転調している。
再びFmajへ戻るための転調。
Fmaj → Gmaj (長2度)
落ちサビの最後のコードがB。これはFmajだと#Ⅳ、GmajだとⅢになる。サビの最初のコードがC(Ⅳ)なのでⅢ→Ⅳの進行で転調している。
転調を繰り返してきても最後にはしっかりとGmajに戻る。
感想
Bメロで長3度下がるだけでも変わってるし、C'→間奏→間奏'のⅥmを使った転調も謎すぎる。
「僕たちはひとつの光」に習う理想的な転調
今更感あるけど書いておく。
転調で大事なのは、転調した後に再び"元の調へ戻る"こと。戻ってくるまでが転調である。
「僕たちはひとつの光」はこの"元の調へ戻る"までの流れがとても美しいので詳しく見ていきたいと思う。
僕たちはひとつの光 / μ's
曲の構成
最初にこの曲の構成を確認する。
イントロ → A → A' → B → サビ → 間奏1 → C → C' → サビ → 間奏2 → サビ → A
Dmaj Fmaj Abmaj Bmaj Abmaj Amaj Dmaj
このように、Dmajから始まり複数回の転調を挟んだ後に再度Dmajへ戻って来ている。
もう一つ注目したいのは最後がAメロで終わっていること。ソナタ形式の再現部のごとく曲の最初と最後で同じ調の同じメロディーが使われている。
転調の仕方
次は個々の転調の方法。
この曲では短3度、半音、下属調の3種類の転調が使われている。
Dmaj → Fmaj (短3度)
転調の予告コードとしてBb→Cが使われている。これはDmajだとbⅥ→bⅦ、FmajだとⅣ→Ⅴ。A'の最初のコードがF(Ⅰ)なのでⅤ→Ⅰのドミナントモーションで転調している。よくある手法。
Fmaj → Abmaj (短3度)
Bの最後でFsus4を解決している。これはドミナントやセカンダリードミナントで次の調へ繋げるパターンではなく、セクションの最後をトニックで終えて次のセクションへ移る形。
Abmaj → Bmaj (短3度)
転調の予告コードとしてEbm7→Ab7が使われている。これはAbmajだとⅤm7→Ⅰ7、BmajだとⅢm7→Ⅵ7。C'の最初のコードがEM7(ⅣM7)なのでⅥ7→ⅣM7の進行で転調している。本来ならC#m(BmajのⅡm)へ進むところをⅣで代用している形。
Bmaj → Abmaj (短3度)
C'の最後でCsus4を解決している。これはAbmajだとⅢsus4→Ⅲ。本来ならこの次はFm(AbmajのⅥm)に進みそうなところだがAb(Ⅰ)へ進んでいる。つまりこれはⅢ→Ⅰの禁則進行。禁則といってもポップスでは時々使われる。
Abmaj → Amaj (半音)
転調の予告コードとしてD/E→Eが使われている。これはAmajだとⅣ/Ⅴ→Ⅴ。その前のDb/Ebから半音で繋がり、なおかつサビの最初のA(Ⅰ)に向かってⅤ→Ⅰのドミナントモーションで転調している。
Amaj → Dmaj (下属調)
転調の予告コードとしてEm7/Aが使われている。これはAmajだとⅤm7/Ⅰ、DmajだとⅡm7/Ⅴ。Aの最初のコードがD(Ⅰ)なのでⅡm7/Ⅴ→Ⅰの進行で転調している。これはよく使われる部分転調"Ⅴm→Ⅰ→Ⅳ"の応用。Ⅴm→ⅠがひとまとめになってⅤm/Ⅰになり、そのままⅣの調(ここではDmaj)へ転調している。
B→サビは+3度、C'→サビは-3度と曲の前半と後半でサビへのアプローチを変えている。そしてラスサビで定番の半音上昇を行い、近親調のDmajへ回帰という流れ。
この曲の魅力
結局のところこの曲の魅力は、
"各所で転調を行い曲に彩りを加えつつも最後には元の調へ戻る"
こと。これが素晴らしい。
中でも最後のAmajからDmajへの下属調転調が良い。ラスサビで半音上昇する曲は多くあるが大体の場合そのまま戻らずに曲を終えてしまう。しかしこの曲では半音上昇後も再度転調しており、さらにその転調先が半音上昇する直前の調ではなく曲開始時の調なのだ。まるでここに至るまでの転調も全て最後にDmajへ回帰するための布石だったかのよう。
このような最初から最後まで計算され尽くした曲はあたかもパズルのようで数学的な美しささえ感じる。それがこの曲の魅力である。
最後に
余談だが僕たちはひとつの光のイントロはスノハレ進行。初めて気づいた時は「EFFYお前!!!やりやがったな!!!神!!!!!」ってなった。